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「明智殿、先ずは丹羽殿がやって来るから、その左側の器を用いてくれ」
見事な細工が施された指物の茶道具入れの左側引き出しを開けると…
桐の箱が入っていた。
桐の箱の組紐をほどき中の器を取り出す…
赤か…青か…紫か…様々な色が混ざり合った器である…
「これは見事な…」
「その色を出すには苦労したんだ!」
「…は?」
箱書きには虹色茶碗と明記されていて、作者は藤匠と記されていた…
今…近畿界隈の茶好きな者たちが最も欲しいと言う藤匠の茶碗…
藤匠……!!!
「その細かく縦線に見えるよう釉薬をかけるのにどれだけ苦労した事か…」
「これは…藤沢殿…の?」
「箱に名前書いてあるでござろう?」
「あ…確かに…」
「最近は土に触る時間が取れないから…」
そう…藤匠の器、つまり匠が作る器が高騰している理由は、ここ数年匠が器を作っていないからである。
「失礼する!」
にじり戸から入って来た丹羽氏に挨拶をする匠
「ようこそ参られました忍びと言う事で出迎えもせず…」
「あぁ!その方が良い!」
匠はそっと光秀に目線を送る。
光秀は慣れた手つきで茶を立て始めた。
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