困った時の藤沢頼み

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光秀は藤沢匠と言う者が分からなくなって来た… 織田家の中堅である藤沢家…その力は絶大である…と言う事に少し気付いて来た。 三者との面会の間に、木下藤吉郎や前田利家も訪ねて来て借財を頼みに来た。 匠は、両者に銭を五千貫ずつと贈り物として武具や鉄砲を両家の屋敷に運ぶよう指示を出す。 織田家中の家臣たちは挙って藤沢家の屋敷の門をくぐりやってくる。 光秀もその接待に追われる毎日を過ごす。 匠は頼みに来た全ての家臣に証文もなく銭を貸しまくる。 その間に藤倉徳兵衛が米の買い付けを終わらせ帰還したので、匠は越中の柴田軍、志摩を従軍させ紀伊に侵攻中の滝川軍に差し入れとして十万石ずつの米を送る。 光秀はまるで…織田家の政策がこの藤沢邸から発せられているような錯覚を起こし始めていた。 各工事を与えられた者は匠にどのようにすれば良いのかと相談にくる… 武具や鉄砲の買い付けを命じられた者は、匠に藤徳屋への紹介状を貰いにやってくる… 極めつけは…信長自らが藤沢邸を訪れての借財であった。 「匠!銭が足らん!」 「いかほど?」 「有るだけ出せ!」 「畏まりました…が、それより!御約束は?」 「心配するな!今、探しておる!」 「どうぞ、よしなに!」 「うむ!」
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