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そんな忙しい最中に匠は斎藤龍興に使いを頼む。
北近江の山間の庵に住む者を当家に誘って来て欲しいと…
「御免!」
「どなた様でござる?」
「拙者、斎藤龍興と申す」
中から慌てて戸が開けられ飛び出して土下座をする庵の主…
「龍興様…某は取り返しのつかぬ事を…」
「おぬし…は…重治か?」
「はっ…竹中半兵衛重治にございます…」
「なるほど…それでか…」
「は?」
「いや!半兵衛、わしはおぬしに礼が言いたくての?ずっと探していたのだ!」
「某に礼?」
「おぬしのお陰で今の主に会えた!そして世の中が少しだが、分かるようになった!おぬしが目を醒まさせてくれたのだ!だから、その礼が言いたくてなっ!」
「なんと…」
「わしは前を向いて歩いておる!今の主は凄い人物でわしは心底から尊敬しておるのだ!それもおぬしのお陰だ!」
「御立派になられまして…」
「次はおぬしが前を向く番だ!おぬし程の才ある人物が何時までこのような山間に隠れ暮らしておるのだ!」
「某は才に溺れ…」
「わしは国を失い城を取られたがこうして生きておる!人に仕える喜びや民に感謝される嬉しさを知った。あの頃のわしから今のわしがおぬしには想像出来たか?」
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