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「なぜ……それを…」
「おぬしほどの才を死なすには惜しいと…なっ?」
匠の笑顔を見て…半兵衛は悟る…
恐らく今までの間、自分はこの人物の掌の上で守られていた事に…
毎月毎月、薬や書物や食糧や衣類等を庵に持ってきてくれていたのはこの人物の手の者だと…
半兵衛は平伏する。
「本日より御世話になり申す!宜しく願います!」
武士は、恩を受けたらなそれを命に代えても返さなければ武士に在らず!
知らなかったとはいえ…半兵衛にとって匠は命の恩人なのである。
「うむ!重治よ、頼むぞ!暫くは龍興から当家の事を教わるが良い!龍興、そのように計らえ」
「御意!」
「それと、所領は小牧山に三千石与えよう!龍興、そのように手配を!」
「…承りました」
龍興は半兵衛を促しその場を去る。
龍興の浮かない顔に…
半兵衛は問う。
「龍興様…何か気に掛かる事が?」
「もう同じ主の家臣、様はおかしいであろう、竹中殿」
「はっ!そうでございました…」
「わしが気に掛かるのは…竹中殿に与えられた領地の事だ…」
「新参の拙者が三千石ではちと多いと?」
「いや…そう言う事ではない…わしも、もう一人の家臣、山内一豊も同じ三千石…」
「そうでござりますか…」
「殿が織田家から賜っておる領地は一万石だ…」
「…なんと!」
「前から…殿は地には余りに執着がないと思うておったが…」
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