龍興のけじめ

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匠が、指示を出すと、そのように事が運ぶのだ… まるで…先の事が解っているかのような的確な指示… 銭を用意すれば、銭を借りに来る者が訪ねてくる。 馬を用意すれば、馬を入り用だと言う者が… どこどこの工事がと相談に来る者が来ると、予め書いていた紙を広げその者に的確な助言を… 半兵衛が知るかぎり… 匠はここ数ヶ月外に一歩も出ていないのだ… まるで観てきたかのような地図や絵図面… 「知る事、計る事、何より大切なのは、察する事である」 何時しか、疑問に思って匠の遣り様を見ていた半兵衛に投げ掛けられた言葉… 「察する事とは、つまり想像力、相手がどうしたいのかと頭の中で思い描く事だ!」 「察する事…」 「戦略と政策は表裏、政策は民がして欲しいと願う事をしてやれば良い、戦略は相手が嫌がる所を攻めてやれば良いのだ」 「確かに……」 「草民の声は我らには届かぬから察してやらねばならぬであろう?その点今の相手は同じ家中の者たち!楽な物だと思わぬか?」 「…そう思うのは…殿だけかと…」 「なんだ!重治、ゆくゆくは、おぬしにもこの位の事をして貰わねばならぬぞ!」 「某に…出来ましょうや…」 「出来るか?ではなく、やるのだ!やれぬ者は民の上に立つ資格などないと知れ!民の声を察しろ!おぬしは我が家臣であり、三千石の領主ぞ!良いな!」 「申し訳なく…」
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