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匠は集落の者たちが溜め池の作業に来ると幾ばくかの米と薬草を報酬がわりに渡す。
集落の者たちは朝早くから農作業を済ませ溜め池作りに精を出すようになった。
そうした生活が秋まで続いた。
秋になると集落の者たちは稲刈りや冬の準備に忙しくなる。
稲刈りが終わり農閑期に入ると、匠は徳兵衛に薦め稲刈りが終わった田んぼの土を掘り返し溜め池作りで出た山の土と入れ替えるという作業を始めた。
集落の者たちは、手伝えば匠から何かしらの恩恵に与れると思いそれを手伝う。
田んぼの底の泥を掘り返し空き地に運び溜め池工事で出た土を入れる。
田んぼの底の土は四角い木の枠に入れ四角い土の塊を作りそれを並べ乾かす。
その乾いた泥の四角い塊を中を空洞にして芋虫のような形に山の斜面に積み上げていく。
所謂、登り窯である。
集落の家から木灰を集め荒縄を燃やし藁炭を作りそれを粉末にする。
それを合わせた泥に溜め池の工事の際に出た鉱物を砕き粉状にした物を混ぜ釉薬を作る。
匠は田んぼの底の粘土で次々と陶器を作る。
釉薬の調合で様々な色の器が出来上がる。
徳兵衛や集落の者は次から次へと何かを作り出す匠を何時しか人ではないのではないかと思い始めていた。
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