信長の誤算

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「最初に契約を反故になさったのは?」 「当方である…」 「嗚呼…拙者はもう疲れ申した…死なせて下され…」 「待て待て待てっ!許せ!」 「拙者は信長様の臣…許すだの許さぬだのは…拙者の意にあらず…信長様の為に…築き上げてきた今までの信が…盟約は必ず守ると日の本に広めて参った事が…この私情からの小事で崩れてしまい申した…これも…臣たる拙者の責でござる…」 この時…信長は自分の犯した事の重大さに気が付くのであった。 個人の感情で行われる軍略… 誓紙破りを自ら行うと言う愚… 力を持って制しようとした増長… それを命を懸けて気付かせようとしている匠… 浅井朝倉の命を救うのは…自分を独裁者にさせない為の事… 盟約は破る、力に物を言わせて蹂躙し家を亡ぼす… そんな者に誰が心から従うと言う? 頭を下げても見掛けだけの事… 見えない所で舌を出しているのだ… 「此度はわしの落ち度だ!匠よ!修正を頼む!」 すると匠は脇差しを収め信長に平伏する。 「お任せ下され!」 「うむ!」 急に態度を変えた信長と匠を見て… 匠が何かを訴え、信長が察しそれを受け入れた事が伝わった信忠… 匠の命を懸けての訴え… 演技ではなく…あれは本気であった。
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