1183人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「最初に契約を反故になさったのは?」
「当方である…」
「嗚呼…拙者はもう疲れ申した…死なせて下され…」
「待て待て待てっ!許せ!」
「拙者は信長様の臣…許すだの許さぬだのは…拙者の意にあらず…信長様の為に…築き上げてきた今までの信が…盟約は必ず守ると日の本に広めて参った事が…この私情からの小事で崩れてしまい申した…これも…臣たる拙者の責でござる…」
この時…信長は自分の犯した事の重大さに気が付くのであった。
個人の感情で行われる軍略…
誓紙破りを自ら行うと言う愚…
力を持って制しようとした増長…
それを命を懸けて気付かせようとしている匠…
浅井朝倉の命を救うのは…自分を独裁者にさせない為の事…
盟約は破る、力に物を言わせて蹂躙し家を亡ぼす…
そんな者に誰が心から従うと言う?
頭を下げても見掛けだけの事…
見えない所で舌を出しているのだ…
「此度はわしの落ち度だ!匠よ!修正を頼む!」
すると匠は脇差しを収め信長に平伏する。
「お任せ下され!」
「うむ!」
急に態度を変えた信長と匠を見て…
匠が何かを訴え、信長が察しそれを受け入れた事が伝わった信忠…
匠の命を懸けての訴え…
演技ではなく…あれは本気であった。
最初のコメントを投稿しよう!