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一通り見学を終えた徳川一行は匠が用意した宿所に戻っていた。
「父上!物凄い大規模な普請でござりましたなぁ…」
「うむ…」
「しかし…信長様がもっこを担いでいたのが今でも信じられませなんだ…」
「信康、おぬしがそこまでしてやりたいと思う家臣がおるか?」
「拙者が…でござるか…いえ…特には…」
「あの信長様が、そこまで思う人物と言う事と知れ!信康、信長様から見ればおぬしも藤沢殿も娘婿つまり義理の息子じゃ!」
「それが…何か?」
「うむ…特にはない…下がって休むが良い…」
「それでは失礼つかまつる…」
家康は近習たちも下がらせて一人虚空を見詰めながら…親指の爪を噛む…
「殿!!何を一人じめじめとしていなさるかっ!ほれっまた爪などしゃぶって!そんなに母御が恋しゅうござるか?」
「煩いっ!作左!」
大きな声で家康をなじり目の前にどかりと腰を降ろすのは、「三河者」の代名詞でもある、本多作左衛門重次である。
「遠州三河の太守様がそのようにじめじめとしていては、臣まで暗くなると言う物!それとも、何か気掛かりがおありか?」
作左は持ってきた茶碗に並々と酒をつぎ、家康に突き出す。
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