大名として…

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藤沢家から迎えの者がやって来て一同で出掛ける家康 家康と信康には輿の用意があり、下へ措かぬもてなしようであった。 家康は藤沢家の仮住まいを見て驚く… 家康たち徳川家の宿所の数倍簡易であり…そして小さいのである。 「ようこそおいで下さりました!」 藤沢匠が家の前で出迎える。 「当家は狭い故、野外に宴の用意がしてござる!さあ皆様、お通り下され!」 一同野外に設けられた席に腰をおろす。 目の前には鉄の板が置いてあり、その回りに何かの生肉や切った野菜が並んでいる。 家康たちが椅子に座ると各々の鉄の板に肉や野菜を置いて焼き始める。 家康と信康の前には匠が立ち食材を焼き始める。 ジュージューと音を立て焼かれる肉を見て内心驚く徳川家一同 だが、その匂いを嗅ぐと腹の虫が鳴き始める程の食欲をそそる匂いがする。 「藤沢殿…これは?」 「当家の名物焼肉と言う物でござる!さあ!熱い内に」 匠が薦める焼けた肉を箸で取り口に入れる家康… 「こっこれは…旨い!」 「どうぞおつぎ致します」 家康の横に見目麗しいまだ幼げな娘が立ち家康の盃に酒をつぐ 「うむ!忝ない!」 「徳川殿、拙者の妻の香にござる」 「藤沢匠の妻、香にございます」 てっきり女中だと思っていた家康は流石に吃驚した… 藤沢匠の妻…つまり信長の娘である。 下手をすれば下女よりも粗末な着物を着ている娘が信長の娘だとは、誰も思わないだろう…
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