大名として…

13/17
前へ
/321ページ
次へ
「みすぼらしい姿とお思いでござるか?」 「あっ…いや…」 香は隣の信康に酌をして、その隣の酒井忠次へと回っていく。 「あれは、妻自ら織った着物でござっての!妻の一番の宝でござるので」 「香殿自らが…でござるか?」 「まだ始めたばかりでござって、まだあのようにみすぼらしい物しか作れませねが、まぁ…まだ子供故、大目に見て下され!」 「いや…立派な心掛けでござろう…」 「そう言って頂けると…かえって恐縮するばかりでござるよ!」 そう言って笑う匠、家康も釣られて笑顔になる。 焼肉のもてなしは徳川家の面々の胃袋を掴んだようで宴は大いに盛り上がりを見せた。 匠は家康を誘い、家の縁側に碁盤を置き差し向かいで酒を酌み交わしていた。 「こう言う宴は初めてでござるが、中々良い物ですなぁ!」 「まともにもてなせぬ故の苦肉の策にござれば…」 「いや!もてなしは心でする物!この家康、大変楽しませて頂いた!」 「有り難き御言葉、痛み入り申す」 「して…藤沢殿に一つ聞きたい事があっての?」 「なんなりと!」 「あの欄間の意図は?」 「意図などは特に…ただ世の中の事柄全て二面性を持っており申す。」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1186人が本棚に入れています
本棚に追加