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その頃、木下藤吉郎は名を変えて羽柴秀吉と名乗っていた。
秀吉は、浅井朝倉の挟み討ちの折りに殿を見事果たしその功労に酬いる為に信長は播州の切り取り勝手を許した。
現在、羽柴家の勢力は有馬辺りまで伸びており日々じわじわと播州に入り込んでいるようである。
一方、明智光秀は加賀と能登の攻略に成功し能登の地の支配を許され大名となったのである。
加賀の地は堺の代官を勤めていた前田利家に与えられた。
次々と近隣の国を攻略しその地を惜しげもなく与える信長…
そんな遣り方を横目で見て羨ましがる者が京に居たのであった。
細川藤孝である。
ともに行動していた明智光秀は…今や国持ちの大名…
一方で幾ら銭を集めても放蕩三昧…公卿との付き合いやら、見栄え良い服装や装飾などで湯水の如く流れていく…
山城の領地だけでやっていける訳もなく…もう既に向こう三年分の年貢は質に入っているのである。
藤孝はその領地の支配経営から京の治安の管理、公卿や寺院との付き合い等に日々追われて…収入など無きに等しいのである。
そんな折りに将軍、足利義昭が藤孝に言う。
「余は兄の為に新たに寺を建立しようと思う。藤孝!そのように手配をせよ!」
側に居た、和田氏、一色氏は驚いて義昭の顔を見て藤孝の顔を見る…
「上様…正気でござりましょうか…」
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