手紙公方と甲斐の虎

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怒り心頭の義昭は後先考えずに手紙を書き乱発する。 南は島津家から北は南部家まで、名だたる大名家に手紙を送り上洛を促す。 「ともに天下を采配しよう」と… 鵜呑みにする大名は誰一人居ないが、様々な理由を立てて置き断らないまでも婉曲に今は不可能だと手紙を送り返すのであった。 緒大名は返事の際に、貢物や銭を京に送る。 義昭はそんな緒大名の返事と貢物に気を良くして、今度は次々に役職を乱発し出したのであった。 抑える者は誰も居ない… 諭す者も誰も居ない… 繰り返していく内…将軍家の書状は偽手紙よりたちが悪いと…誰もが見向きもしなくなったのであった。 そんな時に… 甲斐の武田氏だけが違う動きを見せた… 将軍家からの書状を大義名分として、上洛を開始したのである! 偽手紙でも信用出来なくても…力ある者がそれを振りかざせば本物より効果を発揮する物で… 武田家当主、武田信玄は、義昭を動かし越後の上杉家を封じ込める事に成功したのである。 背後の憂いを断ち、信玄は堂々と軍を興し東海道を目指して甲斐から軍を発したのであった… それに慌てたのが…織田信長…そして徳川家康であった。
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