手紙公方と甲斐の虎

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信康は回りの家臣に愚痴をもらす… 岡崎城に戻った信康は面白くない顔でいる。 三河衆の者たちはそんな信康の態度の意味が分からず首を傾げるばかりであった。 匠は東海道を東へ行けるだけ進み、夜半過ぎに少しばかりの仮眠を取り、直ぐに出立する。 道案内の徳川三河衆家臣は、そんな匠の行動に涙を流し感動していた。 遠州に入ると直ぐに徳川家の重鎮である酒井忠次が出迎えに来ていた。 「藤沢様、遠路遥々ご苦労にござる!」 「これは、酒井殿がわざわざの出迎え痛み入り申す!して?武田は何処まで来ておりますか?」 「現在…三方ヶ原城を囲んでおり申す…」 「分かり申した!我らは直ぐに現地に向かいますので、徳川殿にはそのように御伝え下され!」 「一度…浜松城で休息をなさっては…」 「囲まれた城の者は休息もままならぬでしょう!では我らは三方ヶ原へ向かいまする!」 そう言うと直ぐに出立する藤沢軍… 酒井忠次は、それを唖然と見送るのであった。 浜松城に戻り家康にその旨を報告する… 「忠次!直ぐに出陣の仕度をせよ!」 「しかし…殿…それは…」 「忠次!わしは援軍の要請はしたが!守って貰おうなどとは思うてはおらん!おぬしは三河者の意地を忘れたかっ!」
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