手紙公方と甲斐の虎

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「全員救うつもりでしたが…流石は武田軍と言った所でした…面目無い」 「藤沢殿がお救いしてくれなければ、あの者らは城を枕に討死していたでござろう…」 「どうしても、城を餌にする必要があった物で…」 「城を餌に…と申されると…」 「一日あけて明後日には武田は出陣し西を目指すでしょう!」 「上洛戦でござれば…」 「どんな事があっても!徳川殿は浜松城を出ないで頂きたい!」 「どんな事があっても…にござるか…」 「出たら敗れると心得て下されっ!」 「…分かりましてござる…」 「拙者を信じて下されっ!」 そう言うと匠は城には入らず…軍を率いて出て行ってしまった。 その頃…織田信長は兵一万を率いて三河に入って信康の出迎えを受けていた。 ささやかながら宴の準備をしたと言う信康を叱り飛ばす信長! 信康は良かれと思いした事でなぜこのように叱られねばならぬのかと唇を尖らす… その顔を…その態度を見て呆れる信長… 「婿殿!直ぐに出陣の仕度をせよ!城は誰か老臣に任せれば良い!」 「それならば、某が留守を守りましょう」 「で!あるか!」 「申し遅れました!某は本多作左衛門と申す!此度は若を叱って頂き有り難うございます」 「そなたが作左か!家康から聞いておる!」 「はっ!」
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