手紙公方と甲斐の虎

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「藤沢家若衆、大谷吉継でござる」 「用件を申せっ!」 「我が主からの伝言を申し上げます!」 仁王立ちの家康を冷たい視線で見る吉継… 家康は自分の態度に気付き腰をおろす… 「…聞こう!」 「欄間の意味を噛み締められよとの言…」 「欄間の意味を?」 「猫の態度が相応しいと…」 家康は欄間を見上げる… 思い出される藤沢匠の言葉… 「用件は以上にござる!しからば御免!」 立ち上がり帰ろうとする吉継に 「…藤沢殿に伝えよ…心得たと…」 立ったまま、家康に会釈をして立ち去る吉継 「…すまぬ…忠次、わしは我を見失うていたわ…」 「家康様…」 「皆の者!今は我慢の時ぞ!だが!何時でも出張れる仕度を怠るなっ!良いなっ!」 「「「ははっ!」」」 一方その頃…武田軍では… 「御屋形様、徳川は出ませぬなぁ…」 「…」 無言の武田信玄… 「伝令!前方に織田の旗印!陣をひいて待ち構えております!」 「我らに野戦で挑むと言うのかっ!」 信玄はその時…不吉な予感を感じた… 徳川を誘い野戦で討つ目的が逆手に取られ…自身が誘きだされた事を悟る… 退くべきである…
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