手紙公方と甲斐の虎

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「魚鱗で構えよ」 思いとは裏腹な言葉が口からこぼれ落ちる… 「はっ!」 「使い番をこれへ…」 信玄は矢立てを取り出し文を書き始める。 「使い番を連れて参りました!」 「うむ…」 信玄の前で方膝をつき待機する使い番に書き終えた手紙を渡す信玄 「これを勝頼に届けよ」 「ははっ!」 「御屋形様!陣形が整いましてござるっ!」 「陣形を保ちつつ三方ヶ原まで引く…」 誰もがこれから突撃だと身構えていた所の引くと言う信玄の命令… じわりじわりと引く武田軍 「後軍に警戒を怠らぬようにと言って参れ!」 「ははっ!」 それを見た信長は馬防柵を前に押し出し進軍を開始! 「前方の織田の軍勢が押し出して参りました!」 「柵から出たら突撃せよと先鋒へ言って参れ」 「…申し上げます…柵は移動式でござる…」 「…先鋒へ弓隊を」 「はっ!」 読まれている…信玄はそう感じた… 平然を装う額に汗が滲む… ドカーン!ドカーン!ドカーン! 背後から鳴り響く爆音! 後軍が麻のように乱れる… 「中軍は円陣を組め!」 「先鋒は鶴翼に展開!」 矢継ぎ早に命令を出す信玄…
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