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もう少しで、夕日が西に消えていく時刻に一人の若者が数頭の馬を率いて田楽桶狭間辺りを歩いていた。
数頭の馬にはたくさんの荷物がのせられている。
やがて…辺りは暗くなっていく。
程なく集落が見えてきた。
集落の一番大きな家の前に馬をとめて、その家の戸を叩く。
「たのもー!」
「はいはい、どちら様で?」
恰幅の良い中年の男が、戸を開けて顔を見せた。
その若者は懐から袋を出して中年の男に差し出す。
「辺りが暗くなり始め往生しておる。すまないが宿を所望したいのだが?」
中年の男は不意に差し出された袋を咄嗟に受けとっていた。
中年の男は手に乗せられた重みや感触で袋の中身が銭である事に気がつく!
すんなりと銭を差し出し宿を頼む若者の姿形から悪事を働くような者ではないと判断した中年の男は
「辺りはもう暗くなりました故にさぞやお困りでございましょう!百姓の粗末な家でございますがどうぞお泊まりくださいませ!」
「忝ない!わしは武州浪人藤沢匠と申す」
「これは!御丁寧に、痛み入ります、私はこの集落の長を勤めまする徳兵衛といいます」
馬は敷地の柵の中に入れたくさんの荷物は空いている物置を借りそこに降ろす。
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