清須の町にて…

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翌日、材木屋から注文しておいた材が屋敷に届く 「お侍様の癖に材を見る目は確かなようだ…」 「じゃあ、棟梁、図面通りに頼むぞ!」 そう言うと、匠は欄間用の材木を持ち庭の片隅に向かう コンコンコンコン カッカッカッカッ… 「棟梁…お侍様、もう彫り始めたようですぜ…」 「あ?下書きも無しにかっ?」 「へぇ…そう見てぇです」 「おめぇ…ちょいと様子を見て来い!気取られずになっ!」 「へっへい!」 棟梁は図面を睨み睨み職人たちに指図を出す。 職人たちは棟梁の指示に従い仕事を始める。 「いやぁ…しかし難しい注文だなぁ…こりゃあ」 改築及び一部増築も絡んでいる。難しい仕事である。 梁の部分にも継ぎ手を施し補強を行い間口を拡げる。 その継ぎ手の細工は図解で示してあり…大工の棟梁はそのような継ぎ手を見たこともない… だが…理にかなっているのが図解を見て解るから悔しいのだ… 棟梁は昨日、家に帰るなり余りの材で図解を見ながら作ってみた… 一度やってみないと自信がなかったのだ… お陰で昨晩は徹夜である… 気がつけば…旦那の様子を見に言った若衆が見当たらない… 棟梁は辺りを見渡しながら庭の方へ歩き出す…
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