清須の町にて…

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お侍の手は留まる事無く動いている… 小気味良く叩かれるのみの調べ… 何時しか…その場にしゃがみ込みじっと板に見入る棟梁… 匠は若衆始め棟梁やその後に来た職人たちが自分の仕事を観ている事に気付いていたが、そのままにしていた。 やがて、欄間は完成した! 息を吹き掛け木屑を取りのぞく。 「棟梁どうだ?」 微笑みながら棟梁に話し掛ける匠 「!」 我にかえる棟梁 「すげぇ…」 「見事な物だ…」 「おらぁ…こんなに立派な欄間を見たのは初めてだ!」 「おらもだ!」 後ろで見ていた職人たちが口々に言う… 後ろを振り返る棟梁 「やい!おめぇら!おいらが言った仕事は終わったのか!?」 「親方…もう昼過ぎですぜ!」 「おらぁ棟梁を探して来てみたら棟梁は地蔵のように固まって…」 「……」 「わしの仕事に見惚れて居たのであろうよ!」 笑い声をあげる匠 匠の方に振り向き 膝を地につける棟梁… 「お見それしましたぁ!」 そう言って頭を下げる棟梁 「良し!今日より棟梁はわしの弟子だの!」 笑いながら言う匠 「へいっ!あっしは今日より旦那の弟子になりやしょう!」 「おい!棟梁、あれは冗談だ!」 「いいや!あっしは決めましたぁ!」 「そんな事より、腹が減ったな!皆で飯にしようではないか!」 「「「へいっ!」」」
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