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匠は長い棒を振り上げて降り下ろす…
隣の者と歩幅や動作を合わせながら…
織田家の長槍隊の訓練である…
そんな動作でも…半刻もやっていると…回りの者は肩で息をし出すのである。
匠は、身体能力が上がっている為…全く疲れない…
この時代…尾張の兵は最弱だと言う知識はあったが…
匠が見るかぎり…
それは事実のようだ…
三河や甲斐の兵一人分は尾張兵三人と言うが…多分そうなのだろうと思う位に…見るからに弱い
見るからに基礎体力がないのである。
長槍を振っているのか…長槍に振られているのか…
長槍の使い方は刺すのではなく、降り下ろすのである。
所謂、打撃で敵を怯ませたりするのだ。
故に降り下ろして直ぐに構えるなり振り上げるなりして次の攻撃に備えなければ間合いを取られ為す術もなく破られてしまう…
内に入られたらそこで陣形を崩されて終わりなのである。
故に足軽たちは逃げ足が早い者が生き残るのだ…
結果…織田家の兵は弱く、一重に信長以下武将たちの才覚にて武威を維持しているのだと言えよう…
約二刻程の訓練が終わると解散となる。
一応は足軽長屋にての待機となるのだが、皆思い思いに余暇を過ごしている。
長屋の一室で車座に座り酒を呑む者、町の居酒屋に繰り出す者、賽子博打に興じる者…様々である。
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