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「所で徳兵衛殿に折り入って頼みがあるのだが?」
「私に出来る事でしたらなんなりと」
「よくよく考えるにあれだけの荷物をそのまま馬にのせて運ぶのは些か不便故に荷車を馬に引かせて移動したいと思うての?荷車を調達したいのだが…」
「家に荷車がございますからお譲りいたしましょう!」
「それは助かる!忝ない!」
「それよりも藤沢様は仕官の宛てなどはございますのでしょうか?」
「うむ…宛はないのぉ」
「ならば、暫くこの家に滞在なさり先の事をゆっくり考えられてはいかがでございましょう」
「それでは此方に迷惑であろう…」
「袖触れ合うも多少の縁でございましょう!遠慮は無用にお願い致します」
「ならば、暫く厄介になろう!徳兵衛殿、世話を掛けるが宜しく頼む!」
頭を下げる匠に慌てる徳兵衛
「そんな!勿体ない!お武家様が私のような百姓に頭を下げなさるなど…」
「感謝の意を伝えるに武家も百姓もなかろう!」
笑顔で答える匠であった。
匠は徳兵衛の案内で離れに通されそこで休む事になった。
母屋の作りよりも手間のかかっている普請が伺えるので、来賓用か何かなのかもしれない。
生活臭がしないのでこの離れを使うのは稀なんだと推測するのであった。
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