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「それはなぜかの?藤徳屋」
「長が申すには、お殿様が乱世を終わらせるお人だからだと…」
「乱世を…終らせる?」
「故に長は儲けた利を受け取りませぬ…自作の品の売上も次の事業にどしどしと注ぎ込み始末でして…」
「他にも何か商いをしておるのか?」
「はい、藤工と言う名を御聞きになりませぬか?」
「おぉ!数寄屋造りを得意とする工人の集まりであると聞くが…」
「それも我が長が手掛けてございます」
「それは…誠か?」
「はい、その仕事の受注は私ども藤徳屋がやらせていただいておりますれば」
「……」
信長は言葉を失う…
信長の知らない所で信長を慕う者が尾張の発展に尽力しているのだ…
それも…信長が思いもしない角度からの手で…
そこに小兵衛の元に先程、匠に使いを出した者がやって来た。
「お殿様、宜しければ藤工の建てた茶室など御覧になりませぬか?」
「ここに茶室があるのか?」
「我が長が茶を振る舞いたいとの事にございます!」
「そうか!ならば、客となろう!」
「御案内申し上げます」
小兵衛は障子を開け縁側から庭に出る。
「まぁ…なんて素敵なお庭でございましょう!」
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