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「おぬしには欲は無しと言うのか?」
「我儘かも知れませぬが…拙者は好きな事だけして生きて行きとうござるからどちらかと言えば欲の固まりのような者でございますよ」
はにかんだ笑みを浮かべて言う匠
「欲の固まり…か…」
「上に立つ御方は…何かと気苦労が多いと思われますので…」
「なるほどのぉ…」
「拙者は狡いので、そちらの方は信長様にお任せしたく存じます」
「ハハハハハッ!確かに狡いわ!」
「せめて、気持ちだけでもあの着物の蝶のように気儘に翔んでいただきたいとお作りしました」
「うむ!」
「あの着物はお二方にしか似合わぬ着物、是非御笑納いただきたく!」
「うむ!おぬしの気持ち!受け取ろう!だが…これからはわしの見える場でも働いて貰うぞ!」
「それは…御勘弁願えませぬか?」
「たわけ!才ある者を登用せずに何が主君だ!」
「それを言われたら…断る事が出来ませぬな!」
この半刻足らずの会話で…
信長と匠、肝胆照らし合う間柄となったのは言うまでもない!
「でも、一つだけ御願いがございます」
「言え!」
「拙者の登用は美濃を攻略した後に御願い申し上げます!」
「うむ…理由を問うても良いか?」
「美濃攻略に於いて、誰もが認めざる得ない手柄を立てますのでそれを持って登用を御願い致します!」
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