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竹中半兵衛はただただ武士の面目を保つ為に稲葉山城の乗っ取りを企てたが…
この乗っ取りは、主君斎藤龍興の目を覚まさせる為にやったのだと公表していた。
故に美濃三人衆の意見は到底聞き入れられないのだ!
この時の半兵衛にとって…欲を出す事こそが、己を惨めな立場へと追いやる事になると勝手に思い込んでいるからである。
自らの欲求にて奪った城、龍興に目を覚まさせる為にと言う綺麗事でそれを隠した…
折角隠した物を…自らの手で露呈する訳にはいかないのである。
所謂、悪党になりきれないのだ。
民の幸せとか…
国を守りたいとか…
そう言った大義名分…
ではなく、ただただ…
己の恥を濯ぐ為に…
己の才覚をひけらかす為に…
行った、稲葉山城の乗っ取り…
若さ故の過ち…
才に走った者の哀れさ…
半兵衛は今…
心の中で…
苦しんでいるのだ…
「中途半端」な己の弱さに…
打ちのめされているのである。
この半兵衛の仕出かした事を好機と思い、欲望を前面に押し立ててくる美濃三人衆の方がまだ、人として正々堂々としている…
だが、それを許したら…
自分が…汚れてしまうようで、半兵衛には耐えられないのである。
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