招かざる客か…歓迎するべき客か…

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その言葉で、光秀は信長の懐の深さ、優しさを知る… 尾張の半国の領主であった信長が、尾張一国、そして尾張の倍もある大国美濃まで手中に治め足る力量、そして清濁併せ飲む器量… 信長の言葉の裏には、こうして織田家に上洛を勧めに来た光秀も、その事を承諾した将軍の舎弟、足利義昭に対しての慈悲も含まれている。 光秀は深く平伏し信長に感謝の意を示した。 こうして…明智光秀との会談を終らせた信長 光秀が下がると直ぐに、信長は匠を呼んだ。 「…と言う訳だ!匠よ、そなたはどう思う?」 「それで宜しいのではないかと存じます!」 「うむ!」 信長は匠の同意を得て気持ちが晴れやかになった。 心の何処かに、「野望」が無かった訳ではない。 信長も武人である。 天下に覇を唱える野望がない訳ではないのだ。 将軍の舎弟を上洛させ将軍宣下をさせる為にと言う大義名分があれば、京までの道筋に織田家の旗を立てながら向かう事は可能であろう。 だが…そう思った時! 匠の悲しげな顔が脳裏に浮かんだのだ。 上洛をしたその後、見渡せば敵ばかりとなりましょうぞ… そう訴えているような顔つきで…
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