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足利義昭は岐阜城の麓に作られた迎賓館に居た。
これまた匠が拘り抜いて造り上げた屋敷である。
「京より離れたこの田舎でこのような…」
義昭は部屋を眺めながら言う…
「そうですな…」
同じく部屋を見渡す細川藤孝…内心では、一つ一つの細工や工夫が細部に至るまで拘っており…その美しさに舌を巻いている。
これだけ拘り抜いて造り上げたこの屋敷は…どれだけの銭をかけたのであろう…
また然り気無く飾られた壷や掛軸の絵、または書など…皆逸品揃いである。
芸術、美術の館…
藤孝は、内心では唸っていた。
これが織田の実力…
時代掛かった芸術品、美術品は一つも見当たらない。
だが、織田家はこれ程の物を作り出せるのだと言う事であろう…
「あなたにこの価値が分かりますか?」
そう問い掛けられているような部屋…
知性や教養、「本物を見抜く力」を試されているような…
藤孝の額に汗が滲む…
越前よりともに行動して来た明智光秀の方をちらりと見る…
光秀の額にも汗が滲んでいた…
「いやはや…一つの文化でござるな…これは…」
額の汗を拭いながら独り言のように言う光秀…
藤孝はその言葉に衝撃を受けた!
そうだ…これは、もう文化だ!
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