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「なんと、お優しい! 分かりました。天使の様に優しい狼歩さんには、最高の美味を授けましょう」
タコの体が一層輝きを増す。
そして……
……
……
……イカリングの詰め込まれたタッパーが空中に現れた。
タッパーは重力に逆らえず落下する。落下の衝撃で蓋が外れ、キラキラと輝く大量のイカリングが宙を舞った。
「おおっ……じゃなくて! 部屋がイカリングまみれに!」
「ハッピーバースデー」
「どこがハッピーなのですか!?」
「ほらっ、首里君の上にも大量のイカリングが。面白いですよね。こんな状況でも幸せそうに寝ていますよ」
私はタコの体を両手で鷲掴みにした。
「ありがとうございます……でも、イカばかりでは飽きてしまいますね。タコもあれば料理のバリエーションが増えます。変なタコの足が美味だったって噂に聞きましたよ……」
「ちょっ、まっ、話し合いましょう! 狼歩さんの後ろに幽波紋のようなものが見えますよ!?」
「これが見えるのですか? ギリギリチョップというスタンドです。さあ、右手が良いですか? 左手が良いですか?」
「殴られる!? やっ、優しく左手でお願いします」
「NO」
「一思いに右手?」
「NO」
「もしかして両手ですか? 両手で殴りまくりですか? オラオラですか?」
「YES……YES……YES……YES……」
「あなたの願いは叶えました! さよなら」
……
……
こうして、イカリングを部屋中に残して神は消えた。
「何も悪い事してないよな?」
イカリングを口に運ぶと、やたら美味くて余計に悲しくなる。
スマホを手に取ると、多くのクリエーターからお祝いのメッセージが届いている事に気付いた。
癒される。
「みんな優しいな……あっ!?」
大変な事に気付いた。
「あのタコ神様……他のクリエーターのところにも……」
……
……
……それはそれで面白いか。
この意味不明な出来事を心の奥へと閉じ込め、HAPPY BIRTHDAYをピアノで演奏した。
【HAPPY BIRTHDAY!】
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