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「衣千子~頼むぜ。お前、黙ってりゃ、良い女なんだから」
「黙ってたら、歌えないね。やっぱり、しない方が良いね」
「あ、いや、喋ってもお前は、良い女だ。歌なんて歌ったら、もっと最高だ」
衣千子は、煩わしくなり、気まぐれに行くので良いならという条件で交渉を成立させた。
その気まぐれで衣千子は歌いに行ったがために、陽と出会ってしまった。陽は客として来店していたのだが、この出会いのせいで、衣千子は恋心というものを知ることになってしまった。
後から考えても、衣千子は、この出会いになんと名前を付けていいのか分からなかった。不倫と呼ぶほど汚れておらず、恋というほど美しくもない。ただ、愛情を教えてくれた出会いに感謝はしていた。
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