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 なかなかに往生際の悪い陽は、冷たい態度をとられても、衣千子が行く度に声をかけてくる。衣千子はいつも、どこのナンパ師だと軽蔑した目を向けていた。  しかし、その反面で働きぶりは、意外に真面目で気配りも細やかなものだった。  なんとなく、悔しい。  ギャップ萌えを狙っているのだとしたらたちが悪い。しかも、慣れてきたのか、だんだんと衣千子のキツいあたりを、シレッとかわすようになってきた。いつもヘラりとした笑顔を向けてくることが、衣千子は無性に腹立った。  その日、衣千子は、陽のみぞおちに肘鉄を入れて気持ちをスッキリさせた。  肘鉄を食らった陽は吐きそうにして、顔を青くさせていたが、衣千子の表情はスッキリしていた。
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