(1)

5/18
前へ
/180ページ
次へ
 ヘラヘラ笑う陽に慣れて来た頃。  カフェに不良がきた。  ライブハウスを兼用すると、ときどき悪ぶっている学生がやってくるのだ。マスターも良い年だから、きっと舐められているのに違いないと、衣千子は思っている。  陽は、運がいいのか悪いのか、まだ来ていなかった。  不良は高校生くらいで、どう見ても地毛ではない赤や青の髪色で、信号機を彷彿させた。  衣千子は、マスターにバイトは歌うだけで接客はしないと釘をさしたことがあるから、それまで待機中。  マスターは顔色も変えず、ガムをくちゃくちゃ汚く咀嚼する不良達にも、丁寧な接客する。  追い出さないあたりは、流石、商売根性がある。というかマスターは、その昔、札付きの悪だったらしいから、その辺のヒヨッコなんて眼中に無いだけかもしれない。  この不良達は、分かっているのだろうかと、衣千子は首を傾げるが、どうでもいいかと考えるのをやめた。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加