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そもそも、そんな歓迎に値しない客に衣千子は、歌を聞いてほしく無い。先に歌っていた若者達が、簡易ステージを降り順番が回ってきた。若者達は、気が弱そうにコソコソと不良から距離をとっている。あんなに気が弱いのに、不良が入ってきたライブ中は、どんな気持ちだったのか、心中を察すると可哀想にも見えてくる。
衣千子は、気の弱い若者を目で見送り、次は、マスターに嫌だと目線で訴えるもすごまれた。
仕事をしろという顔だ。
仕方なく、ステージに立ち聞こえてくるメロディに合わせて歌う。
ステージは、少しの段差があるだけだが、それほど広くない店を見渡すことが出来る。
だから、衣千子には不良達が片隅でニヤついた顔で何やら悪巧みをしているのも丸見えだった。
面倒くさいことになることを予感しながら、ビブラートを効かしてた。
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