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あぁ、そういうこと……
「分かったわ」
ケチな義昭が、たとえ美羽の母親に体面を保つためとはいえ、毎年お金を出し続けてくれたことの方が普通ではなかったのだ。
ただ、これから先、義昭も美羽に他のことでも経済的に頼るようになったら……そんな不安が頭を掠めた。それを振り払うように気持ちを奮い立たせ、美羽は義昭に念を押した。
「その、代わり……お義母さんや圭子さんたちに、遺産に手をつけるつもりがないことをはっきり伝えて欲しいの。あのお金は、大切なお父さんの形見でもあるから。
お義母さんの生活費のことで、絶対にお義母さんや圭子さんたちの言いなりにならないで。ちゃんと金額を決めて、それ以上のお金は渡さないようにしないと、これからトラブルになりかねないから」
自分からそれを彼らに言えば、角が立ってしまう。美羽は、夫である義昭を間に立たせることで、なんとか穏やかにこの話し合いを収束させたかった。
「わ、分かったよ。これから美羽の迎えが来るまでの間に、このことを母さんも含めて話し合おう、なっ?
絶対に圭子の言うがままになんか、させないからさ」
ずれた眼鏡のまま義昭がヘラッと笑い、美羽はまたゾクリと背筋を震わせた。昨夜の恐怖が再び蘇り、ジリ……と一歩後退りする。
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