訃報

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「美羽? 大丈夫か?」  その声に美羽はビクッと躰を震わせ、顔を上げた。 「どうしたんだ? 電気もつけないで」 「え……」  美羽はあれからソファに座り、時間が経つのも忘れて類から届いたハガキについて考え込んでいたらしい。窓を見ると既に外は真っ暗で、今日は掃除も洗濯も何もしていないことに気づき、慌てて飛び起きた。 「ご、ごめんなさい、私……」 「その、手に持ってるハガキは?」 「ぇ。あ、これは……」  まだ美羽の手にはハガキが握られたままだった。今更隠すわけにはいかない。観念して手渡すと、ハガキを手にした義昭の表情が変わった。 「これ、アメリカで行われる葬儀の案内じゃないか。『Hironori Uchiyama』って、誰なんだ?」  美羽は顔を引き攣らせ、口ごもった。 「……それ、私の実父なの」 「えっ」 「義昭さんが会ったのは、母が再婚した継父だから、私とは血の繋がりはないの」 「そう、だったのか……」  義昭は目を大きく見開き、口に手をやった。こんな重大な事実を結婚して3年も過ぎてから告白したことに、美羽は心苦しさを感じて目を伏せた。 「葬儀は明日じゃないか……俺も、仕事を休んで一緒に行くよ」  思いもよらなかった義昭の言葉に、美羽は驚愕して顔を上げる。
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