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暫くして顔を上げた類は、美羽の記憶にあったものよりも随分高い位置にあった。
黒のスーツにホワイトシャツ、黒のネクタイをきっちり締めたスタイルは義昭とまったく同じであるはずにも関わらず、長い手足と小さい顔、端麗な容姿がまるで別の衣服かのように感じさせる。
真っ直ぐに見つめられる類の視線に、美羽の胸の奥が熱く疼いてくる。耐えきれず視線を逸らそうとすると、分かっていたかのように顔を覗き込まれた。
「来てくれて嬉しいよ、ミュー。ようやく……会えた」
「類……わた、しも……」
その先を言うのは躊躇われた。これ以上感情を溢れさせてはいけないという制御を、なんとかギリギリで掛けることが出来た。それは、後ろに立っていた義昭からの不審な視線のお陰でもあった。
「あ、あの……紹介、するね。こちら……私の夫の朝野義昭さん。で、こっちが双子の弟……内山類、です」
「おと、うと……」
義昭の言葉に、チクリと胸が痛む。実父の存在を話した時に、本来なら一緒に暮らしていた類のことも話すべきだった。けれど美羽の罪悪感がそうすることを拒んだ。出来れば、類の存在はずっと隠し通しておきたかった。
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