別れと再会

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「行こう」  類に手を引かれ、義昭の視線がそこに注がれているのを感じ、居た堪れなくなる。  もしかして、義昭さんは私と類の仲を疑ってるんじゃ……  そんな不安と恐怖に襲われ、背中から冷たい汗がじわりと噴き出してくる。それなのに、繋がれた手を解くことが出来ない。  今、だけ。今だけだから……お願い。  どうか、父の死を悼んでいる姉と弟が心を寄り添わせているのだと、そう思って……  背徳と罪悪感を感じながらも、それを上回るほどの悦びと興奮が肌を何度もざわめかせる。少し前を歩く類の横顔に、胸が切なく震える。  夢じゃ、ない……妄想でも、ない。本当にここに、類がいるんだ……  溢れ出る感情を抑えようとすればするほど肩が震え、涙が込み上げてくる。類の温かくなった手が、それに応えるようにキュッと握られる。  ダメだよ類……お願い。好きになりたくない。類を、愛しちゃいけない。分かるでしょう、私たちは……大事な人たちを、傷つけてしまった。  もう、あんな思いをしたくないから……  手を緩めようとした美羽の手を、類は解くと見せかけて先ほどよりも更にきつく握り直した。それは、美羽の心の声に『離さない』と答えているかのようで、胸がきつく絞られた。  
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