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突然襲われた喪失感に為すすべもなく立ち尽くしていると、「美羽、お父さんにお別れを……」と義昭に促され、ようやく美羽は父に献花を捧げた。
退いた先には、類が瞳に涙を湛えて立っていた。
「僕がいる。僕が、いるから……ミュー」
類に両手を広げられ、美羽は唇を震わせ、耐え切れずその胸に縋ってしまった。
「ウッ……ウゥッッ……類……」
「ミュー」
ふたりしか知らない、父との思い出。それは、類としか共有できない。
誰もこの哀しみを理解出来ない。類、じゃなければ……
美羽は類に濡れた頬を擦りつけ、嗚咽を漏らした。類の鼓動が頬から伝わり、自分のそれと共鳴しているのを感じる。懐かしい、類の匂いと感触……戻るべき場所に戻ってきたという安堵がどうしようもなく広がっていく。欠けていたピースを、再び取り戻した。
そう感じた瞬間、罪悪感という名のインクが落とされ、染みが急速に広がっていく。先ほどは類からしがみつかれて思わず抱き締めてしまったけれど、今のはそれとは違う。自分から、この胸に飛び込んでしまった。
「あ、ありがとう……もう大丈夫、だから……」
美羽はバッと類から離れ、背を向けた。背中に視線が突き刺さる……類のものと、義昭のものが……
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