別れと再会

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 最後に類が喪主としての挨拶をした。さすが長年アメリカに暮らしているだけあってすらすらと英語でスピーチをしていて、先ほど控室で会った時とは比べものにならないほどしっかりした印象があった。それは、喪主としての責任をこなすためにそうしているのか、控室の態度が演技だったのか、美羽には分かり兼ねた。  類のスピーチが終わると係から案内があり、皆がぞろぞろと立ち上がり、出口へと向かう。 「これから、埋葬が行われるそうだ」  義昭の言葉に頷いた。  葬儀場を出ると、建物の背後にメモリアルパークと呼ばれる集団墓地が広がっていた。そこに、父の棺が埋葬されるらしい。  案内された先には、既にその区画の土が掘り起こされていた。改めて参列者を見渡してみると、喪服を着ているのは遺族である自分たち3人だけで、他はフォーマルな服装ではあるものの、色味を抑えたスーツやワンピースといった装いで、昔見た映画の光景とは随分異なる印象を受けた。  ガガガーッと音が響いてきて振り返ると、墓地の芝生の上を小型のクレーン車が走ってきた。クレーンが石の箱の蓋を穴の中に降ろし、棺が箱の中に密封される。牧師が祈りの言葉を捧げ、参列者がそれぞれにお別れを告げた。  墓石に刻まれた『R.I.P』、「Requiescat in Peace=安らかに眠れ」の言葉。父は果たして、安らかに眠りにつくことが出来るのだろうかという想いが、美羽の胸を過ぎった。  今、お父さんは私と類の再会をどこかで見ているの? どんな思いでいるの? 私たちのせいで、お母さんと離婚したことを恨んでる?  ごめんなさい……ごめんなさい、お父さん……
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