別れと再会

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 埋葬が終わると皆で葬儀場へ戻る。  このまま直接帰る者もいるが、この後はケータリングが用意されており、皆で食事を食べながら故人を悼むとのことだった。長テーブルにはピザやハンバーガー、フィンガーフード等が並び、お酒も用意されていたが、空腹のはずなのに美羽はとても飲食する気になれず、ペットボトルの水だけを手に取った。  類が美羽と義昭を連れ、参列者たちにふたりを紹介してくれた。参列者たちの多くは父の仕事関係の人間だった。皆が皆、類と美羽のあまりにも容姿が似ていることと、娘がいることを言及したことがなかったため、その事実に驚いているようだった。その度に美羽は微笑みながら軽くお辞儀をしつつも、会話に入ることが出来ず、居心地の悪さを感じてストレスが募っていった。一通り挨拶が終わったところで、美羽は決心して類に話しかけた。 「類……申し訳ないんだけど、ロングフライトでそのまま葬儀場に来たし、疲れてるの。今日はもう、ホテルに帰ってもいいかな?」  そう言いつつ、明日以降、類に会うことはもうないと決めていた。 「じゃ、送るよ」 「え、いいよ! 類は喪主だし、ここにいてあげて」 「大丈夫、大丈夫。あとは勝手にみんな帰るだけだから。せっかく会ったんだから、それぐらいさせて」  断固として断ろうと決めていたにも関わらず、類はもう既に皆に別れの言葉を告げ、先頭を切って歩いていた。 「ちょ、ちょっと類……」 「いいじゃないか、美羽。せっかくルイがそう言ってくれてるんだから、好意に甘えよう」  義昭はもう類の車に乗る気だった。美羽は肩を落とし、ふたりの後ろを歩いた。  ホテルに着くまでの間だけ……そうしたら、もう類とはお別れ。今後は、二度と会うことはない……
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