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必死に呼びかける美羽に、類が揶揄するように口角を上げる。
「疲れてるみたいだから、寝かせてあげたら? 部屋なら余分にあるし」
そんなこと、出来るわけない……
「義昭さん! お願い、起きて……」
美羽は必死に義昭の躰を強く揺さぶった。
「ん……美羽?」
「よ、義昭さん!! 帰ろう、ホテルに早く帰りたいっっ」
「ぁ、あぁ……すまない。ちょっとウトウトしてしまった」
義昭が目を擦り、気怠そうに起き上がると、美羽は安堵の息を吐き、掴んでいた手を離した。
「ヨシ、眠いんだろ? 今日はここに泊まったら?」
類の言葉に、美羽は肩をビクッと震わせた。美羽は無言で義昭を見つめ、ホテルに帰ろうと訴えた。そんな美羽に、類がトドメの言葉を突き刺した。
「明日、弁護士がここに父の遺言状を持って来ることになってるんだ。相続人であるミューにはいてもらわなくちゃいけないから、ホテルに行ってからまた明日こっちに戻って来るのは面倒だろ?」
「確かに、そうだな。明日ここに戻るなら、ホテルに泊まるのは意味ないよな。飛行機でも寝られなかったから、もう丸2日も眠ってないし……じゃあ、甘えることにするか」
義昭の返事に、美羽の一縷の望みが崩された。
「それなら、運転する必要はなくなったわけだし、ワインでも開けよう。今、持ってくるよ」
類が立ち上がり、キッチンへと去っていく。義昭はもうここを離れなくてもいいという安心からか再びカウチに深く身を委ね、美羽は膝から力が抜けていくのを感じた。
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