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その時、玄関の扉が開く音がガチャッと聞こえ、美羽は弾かれたように手を外し、類から離れた。まるで、悪夢から醒めたような怯えた表情だ。
類は眉間を寄せて睫毛を揺らし、切なげな表情を浮かべて美羽に呼びかけた。
「ミュー……」
玄関で靴を脱ぐ音が聞こえる。義昭の足音が近づいてきているのを聞きながら、美羽の躰が小刻みに震えていた。類はそれを、絶望的な気持ちで見つめていた。
僕を見て。
ねぇ、見捨てないでよ……
けれど、美羽の視界の先に類はもう、映されていなかった。
リビングの扉が開く。
「ただいま」
義昭の声に振り向いた美羽は、硬い笑みを浮かべた。
「義昭さん、お帰りなさい」
「おぉ、クリスマスツリーか。いいな」
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