悪魔の棲家

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 類といると、常に相反する気持ちに引っ張られる。  幸せと悲しみ。喜びと憂い。安堵と恐怖。会いたくて会いたくなくて、愛しているのに憎んでもいて、抱かれたいと思う度に罪悪感に苦しめられる……  もう、私の中で終わらせたはずだったのに。  夢の中でなら、妄想でならいい……と、自分を甘やかしてきたことへの罰なの? 「ッ……ヴッ……ウッ、ウッ……」  顔を上げると、溢れ出る涙が押し流されていく。けれど、表面的な涙を洗い流すことは出来ても、澱となって溜まった心の涙まで流すことは出来なかった。  シャワーを浴び終えて洗面所を見ると、そこにはいつも使っているボディーローションが置かれている。  類の好きだった、香り……  それは、今でも使っているもので、これを塗る度に類を思い出していた。これを使ってしまえば、自分が類に抱かれることを望んでいると認めてしまう気がして、美羽は手にしたローションをそのまま戻した。  鏡に映った欲情を灯した顔が湯気に当てられ、白く掻き消されていった。
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