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サイドテーブルに置かれたデジタル時計は7時を過ぎたところだった。普段ならまだ眠るには相当早い時間だが、時差のせいか頭に濃い霧が掛かっているようにぼんやりとし、疲労から躰が沈みそうに重い。
ベッドに潜り込むと、枕から、シーツから、僅かだけれど類の匂いを感じて肌がさざめいた。
甘ったるくて纏わりつく、官能的な類の匂い。
先ほど抱き締めた時には直で感じていた筈なのに、こうして間接的に感じる方がより深く濃く彼の匂いや温もりが伝わってくるのはなぜなのだろう。まるで類に抱きしめられているかのような錯覚に陥る。
どうして類は、私が結婚していたことを知っていたの? 住所を知っていたの?
私が使っていたシャンプーを揃えていたのは、私がここに来ることを確信していたからなの? これは、罠なの?
ーー類は今でも私を、愛しているの?
抱きたいと、思っているの?
『フフッ……ミュー、警戒してるの?』
類の言葉が脳裏に蘇り、美しく残酷な色に染まった黒曜石の瞳で美羽のベールに包んだ欲情が暴かれていく。
「ッ……ハ、ァ……」
ダ、メ……そんな風に考えたら……
躰の疼きを感じ、下半身に指が伸びる。
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