救いの声

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 義昭は圭子をゴミでも見るかのような目つきで言い放った。 「僕たちが子供がいない共働き夫婦だからって、お前たちに金を貸す義務なんてないし、絶対に金なんてやらないからな!」 「えぇっ、じゃあマンションの頭金は?」  すっかりマンションを購入する気でいる圭子が、非難めいた口調で声を上げた。 「晃さんの店を担保にして、銀行からお金借りればいいだろ?」 「それだと利子がかかるじゃない! さっきお母さんも言ってたでしょ、助け合いが必要だって!!  親子や兄弟間のお金の貸し借りなんて、どこでもやってるし、困ってる妹を見て自分からお金の工面しようかって言うのが普通でしょ」  助け合いが必要だと主張する圭子だが、美羽は義昭と一緒になってから一度も圭子に助けられた覚えなどないし、これからもないだろうと思った。  義両親の離婚話も平行線のまま長い話し合いになったというのに、また圭子とのお金の話で長くなりそうだ。きっと、圭子は少しでも多く金を(むし)り取ろうと、あの手この手を使って主張してくることだろう。  もう嫌……ここからすぐにでも出ていきたい。  類は今頃、どうしてるんだろう。あのメールの後、また何か連絡してきたかな……    美羽が唇を噛み締めた時、スマホの着信音が鞄の中からくぐもって聞こえてきた。
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