救いの声

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 隼斗、兄さん……  その声を聞き、安堵が心の中に広がっていく。先ほどがっかりしてしまったことを後悔するぐらい、今はこの声に救われた気持ちになっていた。 「ごめん。ちょっと、待ってて」  スマホから耳を外し、美羽は皆に軽くお辞儀をして部屋を出て行った。秘密にするような話など何もないが、あそこにいたら一言一句聞かれていそうで、会話がしづらい。  急いで台所まで行き、声が届かなさそうな隅に立つと、スマホを再び耳に当てた。 「うん、大丈夫だよ。なんだった?」 『明日の出発の時間についての確認なんだが、飛行機の時間に合わせて7時にそっちに迎えに行けばいいか?』  明日は隼斗がここまで車で迎えに来てくれて3人で羽田空港に行き、母と継父のいる福岡へ行くことになっていた。  LINEメッセージを送った方がよほど早いのだが、隼斗はそういった(たぐい)のことが苦手なため、いつも用事がある時は電話をかけてくる。  だが、電話がきたことによってあの場を抜け出すことができ、隼斗の性格に救われた。
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