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隼斗が電話の向こうで息を呑む。
『何か、あったのか?』
美羽の声が震えていたのを感じ取ったのか、心配するような口ぶりが伝わってきて、胸がキュッと締め付けられる。
どうしよう……心配させてしまってる。
本当は何もかも打ち明けてしまいたいけど、この家でのゴタゴタに隼斗兄さんを巻き込みたくない……巻き込むべきじゃない。
「あ、あの……お母さんからもっと早く来られないかって催促されたから、出来れば今日中に出発したくて……」
苦しい言い訳であることは、自分でも分かっている。
母親に催促されたからといって、もう飛行機のチケットは手配済みなのだ。急に母親が『すぐさま来い』というのも、美羽ひとりならまだしも、隼斗だけでなく夫である義昭もいるし、毎年正月には義昭の実家にいることも分かっているというのに不自然だ。
隼斗は、気づいているかもしれない。
義昭の家で何か悪いことが起こっていて、美羽がそれに巻き込まれているのだということを。
隼斗が何と言うのかドキドキしながら待っていると、短く息を吐く音が聞こえてきて緊張が高まった。
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