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『……分かった。これから、荷物を纏めてそっちに2時間後には行けるようにする。
義昭くんは……このこと、知ってるんだよな?』
義昭の名前を出され、美羽の心臓がドクンと跳ねた。
「う、うん……もちろん」
張り付くような喉の渇きを覚えながら、美羽の頭が義昭への言い訳を考えてフル回転する。
義昭さん、お母さんから急に呼び出しがかかったと言えば、納得してくれるかな。もし、ダメだと言われたらどうしよう……
それは、福岡へ行けないことへの不安や心配ではなかった。
美羽の心を占めていたのは、昨夜のように義昭に迫られたら……という焦燥だった。昨夜は義昭の自慰行為を聞かされるという目にはあったものの、躰に触れられることは免れた。
けれど、それが今夜もそうだという保証はどこにもないのだ。
今までは義両親の寝室の隣にいれば安心だと思っていたが、それが破られた今、信頼のおける隼斗と一緒にいることが美羽にとって唯一の逃げ道であるかのように思えた。
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