救いの声

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 義昭は暫く迷っている様子だったが、やがて頷いた。 「分かった……  じゃあ、美羽。悪いけど今回は僕は体調が悪いからってことで、話しておいてくれるか」  美羽は思わず笑顔になりそうになった口角をキュッと引き締め、「分かったわ」と答えた。  琴子が美羽をチラッと見つめてから、義昭に上目遣いで尋ねた。 「もう客間は弟さんの部屋になってるって聞いてるから、私はどこに寝たらいいかしら?」  美羽はビクッと震えた。本来なら自分の部屋を譲るべきだと分かっているが、美羽のいないのをいいことに家探しされそうで怖い。電動マッサージ器は既に捨てたので見られて恥ずかしいものはないが、父の遺産に関する書類を置いていた。それを持っていかれたところで既に分与は終わっているので何も出来るはずがないとは思うものの、それでも何かされたらと不安だった。  以前の美羽なら自分の部屋を義母に気持ちよく貸しただろうが、今回の騒動により、美羽の琴子に対する気持ちは激変してしまった。  部屋は類が早く帰ってきた場合を考えて鍵を掛けてあるが、それは今自分が持っている。  もし、自分の部屋を貸して欲しいと言われれば断る理由がない。
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