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俯いたままの美羽の様子を見て、義昭が口を開いた。
「じゃあ、母さんは僕の部屋で寝ればいいよ」
「あらそう? 悪いわねぇ」
琴子は、言葉とは裏腹に嬉しそうに答えた。
義昭さん、お母さんなら受け入れられるんだ……
そう美羽が思ったのは、他人を自分の領域に入れたがらない義昭は、自分のベッドに美羽を寝かせたこともなければ、部屋に招き入れることもなかったからだ。夜の営みの際には常に義昭が美羽の部屋を訪れ、事に及ぶ。
美羽が義昭の部屋に入るのは掃除をし、ベッドのシーツを替える時のみだ。その時も、デスクの上のものは決して触らないよう言われていた。といっても、いつも綺麗に片付けられているので何もすることがないのだが。
一度だけデスクの上に置きっぱなしにされていたグラスを片付けたことがあったが、その時には激昂された。
それゆえ、義昭の部屋に入る時にはまるで他人の家にお邪魔するような気持ちになる。
もし美羽に義昭への気持ちがあれば、どうして琴子は義昭のベッドに一緒に寝かせてもらえるのに、自分は一度もないのかと不満に思ったかもしれないが、今の美羽にはそんな気持ちなど毛頭ない。
むしろ、美羽の部屋のベッドで寝ると琴子に言われなくて安堵したぐらいだ。
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