救いの声

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 障子を閉めて少し歩いてから義昭が立ち止まり、振り返った。美羽は警戒するように、必要以上に義昭とのスペースをあけた。  義昭が申し訳なさそうに切り出す。 「実は、先生に渡す金が用意できてないんだ。封筒はあるんだが、まだ銀行に行ってなくて、な……」  昨夜のことについての話題ではなかったとホッとしつつも、美羽は警戒を解くことなく、胸の前で腕を組んだ。 「じゃあ、隼斗兄さんと行く時にATMに寄って、お金おろしておけばいいかな? いつもと同じ金額でいい?」  美羽は生活費を義昭から現金で受け取っている。慶事や弔事などの際には、義昭が銀行からお金を引き出して美羽に手渡すことになっていた。もちろん、カードは義昭が管理しているため、美羽がお金を準備するなら彼からカードを借りなければならない。  美羽が尋ねると、義昭は顔を曇らせた。 「そのこと、なんだが……これから母さんの生活費のサポートで色々と金がかかるだろう? 母さんの生活費は僕の方から出すようにするから、お義母さんの方は……その……美羽が、工面してくれないか?」
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