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「美羽、もしかして怒ってるのか? 僕が勝手に母さんを家に泊めるって言ったから」
美羽の態度を勘違いした義昭が、機嫌をとるように、いつもより1トーン高い声で尋ねてくる。
怒ってる。もう、そんなレベルじゃない……それに、お母さんのこと以前の問題なのに。自分が昨日何をしたのか、分かっていないの!?
苛立ちを抱えたまま、美羽は諛うように笑う義昭から背を向けた。けれど、ここで喧嘩になって義昭が美羽についてくると言い出されても困る。
「……お義母さんが泊まるのは、圭子さんが晃さんの実家にいる間だけ、だよね? それ以上泊まることは、ないんだよね?」
自分が戻ってきてからも義母が我が物顔で家を占拠するようになれば、そこに自分の居場所はもうない。類が加われば、どんなことになるのか想像もつかなかった。
「ハハッ、そんなこと心配してたのか。母さんも言ってただろ? 圭子がいない間だけ泊まらせて欲しいって。
なぁ、美羽。大丈夫だ……僕たちの邪魔はさせないから」
違う。そんな心配をしてるんじゃない……
自分の質問が、義昭には美羽が母親に嫉妬していると取られたのだと分かり、雷に打たれたようなショックを受けた。家に帰ればまたあの恐怖が再現されるのだと仄めかされ、胃液がグゥと食道から喉奥へとせり上がり、吐き気を覚える。
今すぐにでも逃げ出したくなり、美羽は一刻も早く隼斗が来るようにと祈らずにはいられなかった。
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